行動の“理由”を傾聴する姿勢でこんなに変わるんだ!バリデーションケアの根幹の考え方

「帰りたい」と仰っている方がいました。
ショートステイのご利用中で実際に帰る予定の日は数日後になります。

こういう時に、ケアスタッフとしてどう対応するか?

うちのスタッフも色々で『あたたかいお茶いれましたから飲んでいきませんか?』や『奥様からもお願いがありましたが、今日はここに泊まることになっていまして』
と声をかけるスタッフがいました。

その時私はご利用者に大変失礼なことをしてしまったなと思いました。

場合によっては、こういう対応で気持ちが違う方向に向き、気持ちが落ちついて一緒にお茶を飲むということもあるのですが、実は「帰りたい」という原因の中に「とてもお腹がすいているから家に帰って何か食べたい」という理由があって帰りたいということにたまたまマッチするという偶然も存在しますし、「あら、ならいただこうかしら」と本当にそっちの提案が良い方向に向く場合もなくはない。

ですが、まず対人のコミュニケーションとして「帰りたい」という訴えの場合、その理由を聴くことから始まると私は基本的に考えています。

「帰りたい」に対して『お茶を飲みませんか?』は理由を考えることなく、過去うまくいった対応例を思い返し、言葉かけをしてしまっているような気がしました。
私も手法としてばっちりやるわけではないのですが、バリデーションケアという認知症の方への対応方法が確立されています。
そのケアの方法の根幹の考えに【すべての行動に理由がある】ということがあります。バリデーションケアではこのように話題を変えたりして気を違う方向にむけることをパッシングケア というのですが、今回そういう対応をしてしまっていました。

本当に申し訳ございません。こういう考え方と方法があることをしっかり指導します。

そこで対応していたスタッフが変わり、変わったスタッフに対してもご利用者は「帰りたい」と仰いました。数分前より言葉も強くなってきていました。
その変わったスタッフは『はい、その件について、ゆっくりお話し聞かせていただけますか?』と声掛けし、ソファーに一緒に腰掛けそのご利用者の声に耳を傾けていました。

行動の“理由”を傾聴する姿勢でこんなに変わるんだ!バリデーションケアの根幹の考え方

話しが進む中でご利用者から「何でここにいて、帰れないのかがわからないんだ。だから今日は帰ろうと思ってね」とだんだん声のトーンも落ち着きを取り戻し、話しをされていました。
『何でここにいるのかわからなかったんですね。説明がないと不安になりますよね』とご利用者の言葉を繰り返し、不安だった点を要約していました。

このやりとりを聴いていて、私自身安心しました。

ご利用者は表情も豊かに笑顔も見られはじめ、スタッフと話していました。

そのやりとりが終わった後、すぐにソファーに一緒に声かけて話しを聴いたスタッフをつかまえて。まず私の率直な気持ちでありがとうございましたと言いました。安心しましたと。

そして何が対応でよかったかを二人で振り返りました。
やっぱりゆっくり向き合ってコミュニケーションをはかり、理由を聴いたことがよかったのだと思いました。

私自身嬉しかったのでTwitterにこんなことあったよ!とつぶやくと、町田市で日ごろからご指導いただいている方から「認知症であろうとなかろうと人としてどう向き合うかだと思います(経験則やその人の感性がよく見られますが)振り返りを事例として他のスタッフに繋げて共有できるといいですねー!」とコメントいただきました。

うちのスタッフの対応にもばらつきがあり、この事例を共有しながらご利用者に失礼のないようにしっかり勉強し、専門性をチームで高めないといけないなと思いました。


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彌 一勲

特別養護老人ホーム、訪問介護にて施設・在宅ケアに関わってきました。 ご縁があって出会った“人”の人生、生活に向き合い、専門職として関わることを大切にしています。介護が必要になってあきらめかけた自分らしい生活を介護士が黒子(きっかけ)となって叶う瞬間、ワクワクしている表情を見られる時にやりがいを感じます。 認知症になっても住み続けられるまちづくりを医療介護従事者、地域住民の方々と一緒に考え、行っています。